マンスリーコラム

おくりびと

事務所に白い角2の封筒が届ました。宛名書きの横には親展のゴム印が押されているだけで、表面も裏面にも差出人は記載がありません。だいたいの察しが付きますが開封してみると、A4和紙にに印字された文面には、「…M&A専門のコンサルタントで…、取り扱いの事情柄、差出人を伏せて…」とあります。もちろんM&Aを依頼したわけではなく、営業の一環としてDMです。中小企業庁は、日本の企業の3社に1社、127万社が2025年に廃業危機を迎えると言っています。半数の企業で後継者が不在──。大廃業時代が迫って来ていることでのビジネス展開の一例です。

おくりびと。NHKスペシャル「大廃業時代~会社を看取(みと)るおくりびと~」2019年10月放映
個人の最後を看取るおくりびとではなく、会社の最後を看取るコンサルタントのドキュメンタリー番組です。
その内容を番宣から引用します。
『中小企業の廃業が年間4万件を超える「大廃業時代」。中には、取引先や金融機関に借金が残り、地域経済にも悪影響をもたらしてしまうケースも少なくない。こうした中、経営者に寄り添って会社の最後を看取る、「会社のおくりびと」と呼ばれる専門家まで登場。会社を円満な死に導き、人や地域に余力を残して未来へつなぐ試みが始まっている。大廃業時代をどう生き抜くのか、現場ルポと専門家の提言から解決への処方箋を探る。』

会社を経営されている方から、廃業の相談を受けることが時々あります。ご高齢で、子供さんがよそに就職して、後継者がいないのでというケースです。倒産ではないものの、業績もよいというわけではなく、目立つ借金もないというようなケースです。この場合、法律的には、会社の解散登記をして、その後会社の清算手続きをして、清算結了となります。解散登記を行えば、法人税などの申告手続きが必要になります。計画的に廃業する場合は、解散をして、1年経たないうちに残余財産が確定することが多く、解散事業年度の確定申告と残余財産確定事業年度の確定申告をして終わりとなります。

日本は中小・零細企業数が多く、生産性が他の先進国と比較して極端に悪いと言われます。
中小・零細企業数が多く存在している主因は節税対策であり、本当の意味でのベンチャー企業はほんの一握りです。中小企業庁や政府は日本の将来を見据えて、中小企業の延命策ではなく、世界と勝負のできる企業に集約化をはかり、生産性を向上させ、技術革新をしていかないと、日本自体がおくりびとのお世話になるかもしれませんね。